DOLPOの天空駆けるⅡ

 ビジョール

 シェーゴンパを発ち、ビジョール、サルダン、ニサルとドルポの中で
一番奥深い地域に向かう事になる。5000mを越える峠があり、いよいよ今回の核心部である。

 7月6日(曇、雨)
 タータンコーラは、深いゴルジュとなっており、川沿いに下降することは出来ない。
いくつかの枝沢を横切り、大高巻きが続く。途中沢で、やくのキャラバン隊と出会った。ビジョールのゴンパ修復の木材を運んでいるのだ。


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5時間かけた高巻きで、最後の峠を越し、いくつかのカルカが現れると、やっと今日のキャンプ地、タタの近くの放牧地に到着した。

 カルカの住人が頭が痛いとやって来て、薬が欲しいという。痛み止めの薬を渡した。現地の人に薬を渡すのは難しい。薬など飲みなれていないはずだし、症状も的確には、聞き出せない。おそらく、普段は自然治癒に任せるか、漢方の薬草位だと思う。

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 7月7日(曇、雨、一時晴れ間)

 我々は、目の前の尾根を登り、シャムリンゴンパを目指す。カッチャル隊や、ほかのスタッフは、直接ビジョールへと向かって、斜面を下って行った。

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ビジョール

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シャムリンゴンパは、集落の中ではなく、ゴンパだけがいくつかの建物で構成されている。写真の撮影は、許可されなかった。雪ヒョウの毛皮と称する物があった。このゴンパは、ドルポで一番古いという事である。千手観音、不動明王が祭られている。

 再び尾根まで戻り、右に尾根一本越してから、ビジョールへ下降した。緑の畑が広がる、大きな村だった。午後雨あがりに、病院と一緒になったゴンパを見学した。この病院は、フランスからの援助で建てられ、ラマがこのあたりで採れる薬草を調合している。診察は無料のため、かなり遠くからやって来る人もいると話していた。

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 夕方、野菜の買い出しと、学校の見学に行った。我々のシェルパの村から、先生が来ているとの事。シェーゴンパの祭りの踊りを練習していた。

 野菜の収穫期はすこし先のようで、細い大根6本を200Rsで手に入れる事が出来た。

サルダン

7月8日(曇、一時雨、午後時々晴)

学校の脇を通り、川に沿っていくと、いつの間にか緩い登りとなってきた。4~5件の村を見かける。雨の中単調な登りだ。広々とした放牧地に出、しばらくすると一軒のカルカがあった。夕方、キッチンボーイの、プリペイドスマートフォンを借りて、試してみると、なんと、日本につながり、現状を連絡する事が出来た。ネパールの通信事情は複雑。

 7月9日(晴)

 朝は雲がかかっているものの、西の方角にカンジロバヒマールらしき白い山が望めた。歩き始めると、雲も取れて久しぶりに気分が良い。峠までジグザグの道が続いている。峠手前でロバ隊が追い越していく。峠の反対側は急な斜面で、はるか下に緑豊かな畑が広がっていた。部落はカラン。この辺りは、どうも道が地図と違っているようだ。

 サルダンへはもう一つ峠越えが待っていた。峠に登ると学校が建っている。予想外の峠で、最後の登りはフラフラになって、サルダンのキャンプサイトに辿りついた。夕方野菜の買い出しに出かけた。ロキシーを飲み、昨日借りた、プリペイドカード1枚を180Rsで購入する。このあたりは、完全にチベット圏で、ネパール語は半分通じればよい方である。

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 7月10日(晴)

 サルダンのキャンプ地は、村より高い所にあるので、ナゴンコーラまでは、くねくねした道を、かなり下降しなければならない。

 

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後は、左岸の道を下流に向かうのだが、大高巻きもなく比較的楽な行程だ。この道は、上流に向かえばドゥータラップに続いている、立派な街道だ。キッチンボーイは河原に降りて、水際を歩いている。枝沢の渡渉さえ気にしなければ、アップダウンがなく楽かもしれない。

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 やがて前方の景色が開けてくると、パンザンコーラの合流点だ。ナゴンコーラを橋で渡ると、鍵のかかったバッティが一件あった。一休みしているとお店の人がやってきた。近くの住まいから様子を見ていたようである。せっかくなので、シャンプーを入手し、久しぶりにビールを飲んだ。

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 合流点の先で、パンザンコーラを右岸に渡り、そのまま上流へと向かう。この辺りは大きな流れで、高巻きもないので助かる。合流点から2時間程でニサルにつく。

 村のはずれのゴンパに行ってみるが、鍵がかかっていて見学は出来なかった。代わりにネパール人ポリスと話が出来た。この辺りはチベットとの国境が近いので、警備しているとの事だ。

 ボランティアで近所の子供たちに、読み書きを教えている人に会いツァンパ、バター茶をごちそうになる。ニサルは平地が少なく、キャンプ地も村はずれの狭い場所だった。

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 クン・ラ(チベット国境)

7月11日(晴)

 夜降っていた雨は朝には上がった。今日はクンコーラに入る日だ。水場の沢を渡り、がけに沿って回り込み、クンコーラに入る。両岸が狭くなった右岸を進み、少し開けた所で対岸に渡るとやぎ放牧用のカルカがある。上流は広々とした感じ。さらに2度橋を渡り左岸に戻ると、小さな畑と2軒の家があった。そのはるか高いところで、やぎが放牧されている。

 しばらく行くと二股で、先行したスタッフがテントを張ろうとしていた。我々の目指す二股は、もう一つ上なので急ぎ追いつき、本当の二股へ向かうため荷物を積みなおす。しばらく行くと対岸にテントがあり、数人の人が見えた。広々としたモレーンを上がっていくと、やっと目的の二股に到着した。先程のテントで、ヤギを入手する事が出来た。 

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 7月12日(朝雨、晴)

朝まで雨の天気、明け方は強く降っていた。此のところ明け方の天気は良くない。朝食が終わるころ、青空ものぞいてきたので、クン・ラに向け8時出発する。左股に入り、モレーンを越えしばらく行くと、湿った感じで池が現れる。

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天気も回復し、次々と現れるモレーンを越えて行く。どこから一緒だったか、黒犬が前後してついてくる。ブルーポピーもいっぱい咲いている中、上部は広がりを見せ、いよいよ源頭の様である。一つづつモレーンを越えて行くのだが、高度が5000mを越えると息が切れる。

 大きなケルンがあって、その先傾斜が緩くなると、待ち望んだ国境のクン・ラだった。 国境を示す標識があり、その先はチベット高原がはてしなく広がっている。小さな池が三つあり、その先は荒涼とした無人地帯が広がっている。 

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河口慧海が、この辺りのどこかの峠を越えて、チベットに入ったのだが、その足跡は定かではない。しかし、クン・ラに立ってみて、これまでの悪路を越え、この先荒涼としたチベット高原をラサを目指した、慧海師のすごさには、敬服するしかない。 

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 国境をまたぐ道。世界中にいくつあるのかはわからない。しかし、今我々がいる、クン・ラも無人でだーれもいないが、その中の一つなのだ。

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 ムシガオン~ティンキュー

7月15日(晴一時小雨)

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 クンコーラをドンドン下り、最後はパンザンコーラに向かって、ガレを急降下した。河原に降りてクンコーラの河口を飛び石で渡る。ほぼ川沿いに登っていくのだが、いくつかの枝沢を横切らなければならず、その上り下りが意外と負担である。

 日本からの援助米を運ぶ、ロバやヤクのキャラバンが、次々にやって来る。援助米は、チベット経由でムシガオンに集められ、そこからドルポ各地に運ばれて行くようである。

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f:id:dhannebad:20180314150808j:plain ムシコーラの出会いに気づかず、いつの間にか、ムシコーラ右岸の道を歩いていた。橋でムシコーラを渡り、斜面を横切るように登っていくと、部落入り口のチョルテンがあった。ムシガオンは、かなりの畑があり、部落の上部がキャンプ地となっている。夕方、荷運び用のロバ、ヤク,馬が続々と集まってきた。

 7月16日(曇のち晴)

 明け方までかなりの雨だったが、朝起きた時はやんでおり、出発できそうなので一安心。

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 ムシガオンの上に覆い被さるような急斜面の登りから始まる。この急斜面をひたすら登った先が、広々とした、ムシ・ラだった。ここからパンザンコーラに向かって、1200m下降する。この川がパンザンコーラと出会う両側にシーメンの部落がある。キャンプ地が見つからず、時間をロスするが、学校の陰にテントを見つけた時には、ほっとした気持ちだった。

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7月17日(晴)

 今日はティンキューまで。比較的フラットな道なので、馬に乗ることにした。いざ乗ってみると、視点が高く、眺めは抜群だ。膝で鞍を締める様にして、腰でバランスをとる。揺れも少なく、写真など撮りながら、パンザンコーラの川沿いを進んでいく。マイタコーラの出合いが、小さな広場になっていて一休み。バッティもある。

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  ポルワ村で昼食タイムとする。馬から降りると、ずっと膝に力を入れていたせいで、足元がふらふらしている。それでもこの単調な川沿いの道を、歩くのに比べればずっと楽だ。

 昼食後、少し進むとムクデムコーラが左手より合流してきた。マリンバンジャンへ続いている川だ。橋はあるが、馬はそのまま川を渡って進んだ。ここからティンキューは近くで、馬は村の入り口で返し、村の中を歩いて台地にあるキャンプサイトに、到着した。夕方、台地の一角にあるバッティテントに行った。

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 7月18日(晴)

今日は一日休養日なので、画家で、僧侶のテンジンヌルブさんのゴンパを訪ねた。村からは、かなりの標高差があり、ティンキュー全体が見渡せる高台に建っている。あいにくヌルブさんは、サルダンのゴンパへ絵をかきに行っていて留守であった。ひょっとすると、途中ですれ違ったのかもしれない。 

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帰りには、NPO法人EWS(Earth Works Society)が支援している、学校を見学した。生徒たちは一生懸命勉強しており、設備や、医薬品なども揃って来ている様だ。

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 ツァルカ 

 7月19日(曇時々晴)

パンザンコーラの広々とした右岸の道が続くので、今日、明日の二日間馬を使う事とした。左岸はドゥータラップの道が並行している。二股を分けている尾根の末端が、中々近づいてこない。

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 7月20日(曇一時雨)

夜中はかなりの雨だった。出発の時は、かろうじて止んでいた。緩やかな尾根を登り、はるか先が二股になっている。左股はディクンコーラで、橋はないので、膝上の渡渉となる。我々は、馬上のため全くぬれずに済んだ。荒涼としたところをしばらく進むと、ジャーコイバンジャンという峠を越えてドゥーへ続く道が分岐している。

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 広い河原で休憩していると、騎馬、徒歩の集団が追いついて来た。中には、小さな子供まで連れている。ヤチャクンブを取りに来た集団だ。しばらくは、この大集団と相前後しての移動となり、これまでの静かな感じとは一変した。われわれは、途中のキャンプサイトでまでだが、大部隊一行は、ツァルカ目指して先へと急いでいた。

 7月21日(曇一時晴夕方時々雨)

 まずは、目の前のツァルカ・バンジャン(峠)を目指す。緩やかな登りが続いて、ケルンが建っている峠に到着する。

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 峠を越えると一変して、荒涼とした景色となる。眼下は、ツァルカツルストコーラで、バルブンコーラの上流である。はるか先には、雲の間にダウラギリが望める。さすがの8000m峰だ。斜面を川に向かって下降していくと、ゴンパがあり、畑が広がったツァルカの村に入った。チャンチュンコーラを鉄橋で渡り、村のはずれがキャンプサイトになっていた。

 ツァルカ村は日本とも縁が深い所だ。かつて1958年に西北ネパール学術探検隊が、半年にわたって調査しており、鳥葬の貴重な記録を収めたり、根深誠氏や、貞兼綾子氏も深いかかわりを持っている。

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    f:id:dhannebad:20180321202453j:plain    f:id:dhannebad:20180321222620j:plain ≪秘境ヒマラヤ(大森栄著)より≫

 夕方、雨が上がったので、シェルパのラメスが村へ行こうと誘ってくれたので、一緒に行った。ガイドやキッチンボーイたちも買い出しを兼ねて、出かけていた。結局皆が一緒になってバッティに集まり、ロキシーで乾杯となる。 これから先の情報を収集したり、「風の記憶」に登場する、ソナム リンチェンについて聞いてみた。彼は橋の上流に住んでいるとの事なので、明日訪問してみることにする。帰りがけ、我々のロバが対岸にいるので、カッチャルドライバー(ロバ使い)とシェルパが、目の前の川を渡渉して連れ戻しに向かった。

 7月22日(晴一時雨)

一日停滞で、ゴンパの見学。一軒は、その昔は、対岸にあり一本のロープで渡って行き来していたが、10年ほど前にこちら側に移設されたという。

f:id:dhannebad:20180321224118j:plain ≪秘境ヒマラヤより≫

 もう一軒は、村の入り口にあり、ニンマハ派、サキャ派ボン教が混在して祭ってあると説明された。骨笛の実演や、仏像の政策などを見せてもらえた。

 ソナム、リンチェンは残念ながら別人だった。  

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 サンダ~カクベニ

7月23日(晴午後一時雨)

キャンプ地を出るとすぐに鉄の橋で左岸に渡る。対岸にも古い道が付いている。フィルンコーラが右岸に合流。しばらくして、はるか遠くに見えた二股にやっと到着する。

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右股のタサンコーラを吊り橋で渡り、そのまま右岸を高巻くように、急登を登る。尾根に出ると緩やかな、草原となる。やがて歩きにくいガレ場となり、しばらくトラバースすると右、左と沢が合流し、広々とした所が今日のキャンプサイトだった。

 7月24日(曇、雨)

 この辺りに部落は全くない。ノルブルンと呼ばれている辺りは、広々とした草地が広がり、川幅は500mもあろうか。さしものバルブンコーラも源流の様相となってきた。ヤクカルカと呼ばれる、放牧用キャンプ地の少し先の台地を今日の泊り場とする。ムコットからマルンコーラを下ってきた人達や、放牧で、ヤギやヤクを連れて、サンダ方面に向かう人たちが、テント脇を通過していった。

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7月25日(曇、雨)
 霧で視界の閉ざされた中、沢沿いの道を進み、左寄りに広々とした草原の中の道を行く。右手には、雲の間から雪をかぶった山が現れた。トングヒマールあたりだろうか?ヤクの放牧されたあたりをトラバースしていくと、ニウエァパスのようだ。

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さらに広い草原を越えると二つ目のパスに出た。サンダパスを越え、ベリーコーラへ直接降る道は使えないようである。二つ目の峠の先は、眼下の沢に向かって急斜面が続いている。この沢もすぐにゴルジュとなり、高巻きが始まる。こちら側は、急登、急下降の連続である。一か所だけ平地があり、今日の泊り場である。左前方雲の間から赤茶けた台地が見えたが、ムスタンの方角だ。

 7月26日(霧、晴、雨)

 で視界が閉ざされた中、急下降から始まる。キャルンパコーラに降りた所に吊り橋があり、渡った所で休憩していると、今通った場所に落石。はるか崖の上にナウルの群れがいた。ちょっとの時間差で危ない所だった。 

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吊り橋の先は、再び急登が始まる。よくもこのような道を付けたものである。トラバースが始まると、サンダの村が見えてきた。二本の枝沢を飛び石で渡ったが、昨年は増水で、昼間渡ることは出来なかったらしい。チョルテンを越え緩やかな登りで、やっとサンダ村に到着した。学校のわきの空き地がキャンプサイトだ。いよいよ最終行程となるので、カシ(食用やぎ)を入手する。 

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 7月28日(霧、一時雨、曇)

 今日はカクベニまで長い下降がある。ドルパで最後の行動となる。昨日休養したので皆生き生きしている。霧で視界が閉ざされた中、学校の脇から急登が始まった。しばらく登って振り返ってみるが、何も見る事は出来ない。ただひたすら登りが続くのみ。ドルポを去る日にふさわしいかなとも思う。

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第一、第二、第三と尾根をのっ越すたびに高度が上がっていく。第二の乗越点では、サンダの女性二人と一緒に休憩する。ジョムソムまで出かけると言っていた。最高のおしゃれをしている。やっと急登が終わり、水平の巻道となる。これが又延々と続いている。やがて最後の峠、4350mに立つ。正面雲の間に白い雪の山がのぞいている。ニルギリと思われる。

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 峠から少し行くと、ジョムソムへ行く道と分かれ、谷に向かって急降下となる。この分岐点は、知らないと見落としそうな所だ。カリガンダキがはるか下方に見下ろせ、その上流は、荒涼とした赤茶けた世界が広がっている。ムクチナート、カクベニと街のある所の緑がとても新鮮に見える。

 どんどん下降を繰り返し、膝がおかしくなる頃やっとガンダキの川岸に出た。風が強く、砂ぼこりが舞っている。少し下流の、幅が狭くなっている所に吊り橋がある。

 今まで通過してきた村と違い、異なった世界に足を踏み入れていく感じがする。  

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 7月29日(晴)

  いよいよ最後の行動日となった。気持ちの良い晴の朝を迎えた。

ジョムソムに向けて、カリガンダキの左岸の道を行く。バイクが走り、電柱が建っている。すべてが驚きだ。ジョムソムの町が少しづつ近づいてくる。橋を渡り、チェックポストがあり、その先のホテルの中庭に、後のテントを張った。夜中にカチャルドライバーと、キッチンボーイがデュナイに向けて帰って行った。ガランガランと、ベルの音だけがいつまでも鳴り響いていた。   

      

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